KOHEI TAKAHASHI

WORK

目の交換、視線の先、彼岸と此処との間を

目の交換、視線の先、彼岸と此処との間を|インスタレーション(芦屋市立美術博物館にて)2023年
インクジェットプリント、水性塗料、鉄、アルミ、トタン、ゴム、プラスチック、テント生地、他
撮影:飯川雄大

彼岸からこちらを見つめる目に、わたしの目を合わせる
視線と視線が向かい合ったその間には、抽象的なイメージが漂い、時間が伸縮する
目と目を交換し、彼岸と此処、双方の地点から先を見つめる

道路の側溝で泥や砂を被り身をよせあう物
本体から切断され何ものでもなくなった物
本来の機能が剥奪され何ものでもなくなった物
断片同士の物が身を寄せ合う場
物がどんな体をしているのか、しゃがんで凝視する
手に取り、目をやり、持ち帰る
土、砂を洗い流す、肌が現れる
具体的な姿をもちながら抽象化されたそれら一体一体を
ビニルシートに並べて虫干しする
乾いた物の体に塗料を垂らす
時間をおいて明度の異なる塗料を重ねる
物の体に無彩色の穴があいていく
物の肌の色が強度を増す
物がイメージになりかける

道路の側溝で、公園で、田畑の隅で
泥や砂を被り身をよせあう物に目をやる
土、砂、石、草、それ自体にも目をやる
本体から切断され何ものでもなくなった物
本来の機能が剥奪され何ものでもなくなった物
断片同士が身を寄せ合う場自体にも目をやる
肉眼で、ファインダーで、モニタを使って目をやる
物によって構成された場を、光と像=イメージに変換する
イメージをインクに変換する
紙にインクを浸透させて変換する
その紙を破く、手で破く
イメージは後退し、紙が前傾化する
イメージは物になりかける

物がイメージに、イメージが物になりかけること
あるいは物がイメージになってしまい
イメージが物になってしまうこと
彼岸とここに立つ者の目が入れ替わるように
モノの次元が入れ替わってしまうこと
次元の越境を確認するには何かしらのフレームが必要である

四十三年前、夙川公園で金属の骨組みに沿っていたテント生地は
四十三年後、物とイメージが錘となって地面に沿っている
四十三年前、仮設の展示空間をフレーミングしたテント生地は
四十三年後、仮設の絵画空間を、仮設の庭を、フレーミングしている

此処と彼岸の間に漂う
物に、イメージに、フレームに目をやる
何者でもないそれらの舞台に目をやる
ここにあるのは、此処と彼岸の間にある、伸縮自在な抽象的な空間の現前化である

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